アトムの時代とカリフォルニア・モダン・リビング
ミッド・センチュリーは核の時代でもある。アメリカと旧ソ連は1950~60年代を通じて、次々と核実験をエスカレートさせていた。 カリフォルニアの明るい日差しのなかに、見えない核の恐怖が偏在していたのがこの時代の特徴だ。...
View Articleレイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』精読 Chapter17
ロジャー・ウェイドが残した手がかりの「ドクターV」の候補の残りの二人を訪ねるかどうか逡巡しているマーロウの姿から始まる第17章。 無駄骨になりそうな予感がして気が乗らない様子のマーロウ。 You waste tires, gasoline, words, and nervous energy in a game with no pay-off. You're not even betting...
View Articleバウハウスができあがるまで
モダンデザインの源流となったバウハウスだが、モダンデザイン誕生の歴史には想像以上に紆余曲折があった。 バウハウスのルーツは19世紀末のイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動に求めることができる。アーツ・アンド・クラフツというと、機械文明を否定したジョン・ラスキンの思想やウイリアム・モリスによる中世の手仕事に回帰したような植物文様などの装飾性の高い壁紙が思い起こされる。...
View Articleフランク・ロイド・ライトとモダンデザイン
43歳のフランク・ロイド・ライトは、妻子を捨て、施主の妻だったメイマ・チェニーとヨーロッパに駆け落ちする。1910年、明治43年のことだ。 やむにやまれぬ情熱とともに、冷静な計算高さもあわせ持っていたライトは、ヨーロッパの地で自らの作品集を刊行し、逃避先での仕事確保を目論む。 ドイツのヴァスムート社が刊行した図面集『フランク・ロイド・ライト作品集』である。...
View Article2016年花見大賞発表
2016年の花見大賞はこの句(中央)に決定! おじさんもこの時期には感傷的になるのダヨ、きみ。 copyrights (c) 2016 tokyo culture addiction all rights reserved. 無断転載禁止。
View Article花嫁修行中の日本人女性がバウハウスに入学したら ~『バウハウスと茶の湯』を読んで~
女学校を出て花嫁修業をしていた、デザインとも建築とも無縁な、もちろんバウハウスも知らなかった、そんな明治生まれの20歳の日本人女性がバウハウスに入学したら。 著者の山脇道子は1930年(昭和5年)、夫の建築家山脇巌とともにデッサウのバウハウスに入学し、1932年にナチスによって廃校に追い込まれるまでの2年余りをバウハウスで学んでいる。...
View Articleレイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』精読 Chapter18
第18章では、ロジャー・ウェイドが残した手がかりのドクターV候補の最後の一人をマーロウが訪ねる。 三人目のドクター・エイモス・ヴァーリーは、大きな古い屋敷で、寝たきりの金持ちの老人相手の施設をやっている。頭の禿げ上がった大柄の男が気さくな笑顔でマーロウの前に現れる。condescend to~は、気さくに~するという意。 A nurse in crisp...
View Article『ホール・アース・カタログ』断章~カウンターカルチャーの時代~
『ホール・アース・カタログ』 Whole Earth Catalog(WEC)は1960年代後半から70年代にかけて、世界の多くの人々に多大な影響を与えた伝説のアメリカ雑誌だ。(Whole Earth Catalog Fall 1968,source: http://www.wholeearth.com/index.php)...
View Articleバックミンスター・フラー ~宇宙との調和の意思~
「失敗をしなくなった時にはじめて、成功するのだ」 バックミンスター・フラーは、ブラック・マウンテン・カレッジで教えていた学生に対してこう助言した。...
View Article坂倉準三のモダニズム~神奈川県立近代美術館が閉館~
鎌倉近代美術館の名で親しまれた神奈川県立近代美術館が2016年1月31日で閉館した。 坂倉準三の設計による日本におけるモダニズム建築の至宝だ。 鶴岡八幡宮の森のなかに、たった今、舞い降りたような端正な白いヴォリュームは、何度見ても、その清新な印象に、思わずはっとさせられる。...
View Article国立西洋美術館~ル・コルビュジエからの日本への贈りもの~
ル・コルビュジエの日本における唯一の作品が東京上野にある国立西洋美術館だ。2016年7月17日にユネスコの世界遺産に登録されることが決定したとの報道があった。国立西洋美術館は、巨匠ル・コルビュジエの建築の持っている特徴を余すところなく伝えてくれる。モデュロールで作られた美しいフォルム...
View Articleシネマディクト・ログ~2015年に観た208本の映画(下)~
遅れてきたシネマディクトの記録。2015年7月~12月に観た映画102本です。劇場とDVDまた2回目、3回目の鑑賞などゴチャ混ぜです。(上)上期の106本の記録はこちらを。107.ムーンライズ・キングダム/ウェス・アンダーソン(2012)...
View Articleミース・ファン・デル・ローエのガソリンスタンド
ミース・ファン・デル・ローエは、最晩年にカナダのモントリオールでガソリンスタンドの設計をしている。ナン島にあるエッソのガソリンスタンドだ。 このガソリンスタンドはDVD『ミース・ファン・デル・ローエ』(ジョゼフ・ヒレル監督)で観ることができる。 低く地を這うように伸びた黒のルーフがクールだ。こんなガソリンスタンドが日本にあれば、どんなにか給油の時間が待ち遠しくなるだろう。...
View Article民藝とモダンデザイン~日本民藝館を訪ねて~
洋風の住宅や低層マンションが建ち並ぶ東京・駒場の静かな住宅街のなかに、独特の和様式の建物が忽然と姿を現す。柳宗悦が創設した日本民藝館だ。 本館と道路を隔てた向かいには、旧柳宗悦邸の西館がある。ファサード部分は、栃木県から移築した1880年に建造された長屋門が設えられている。大谷石の石屋根が珍しい。...
View Articleレイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』精読 Chapter19
第19章。マーロウはロジャー・ウェイドを発見する。 無駄足になった三人のドクターVへの訪問からハリウッドに戻るマーロウは、自らのことをこう形容する。 I drove back to Hollywood feeling like a short length of chewed string. like a short length(pieceとも)of chewed...
View Articleメタボリズム・レトロスペクティブ~歴史になったアヴァンギャルド~
メタボリズムはもともとは新陳代謝を意味する言葉で1960年代に日本におこった建築運動のことである。日本発の唯一の建築運動と言ってもよいだろう。 当時、高度経済成長下にあった日本における最大の問題は、人口の流入、混雑を極める交通、不十分なインフラ、不足する住宅やオフィスなど、急速に拡大する都市への対応だった。...
View Articleジュリアス・シュルマン~メディアとしての建築写真~
「よいデザインが受け入れられることはめったにない。だから売り込まなければならないのだ」。建築写真家のジュリアス・シュルマンの言葉だ。 ジュリアス・シュルマンの写真で最も有名なのは、ケーススタディ・ハウス#22を撮った一枚だろう。ハリウッドヒルズに建つ、建築家ピエール・コーニングが設計したスタール邸(1960)である。一目見たら絶対に忘れられないスペクタクルな一枚だ。...
View Articleレイモンド・チャンドラー『ザ・ロング・グッドバイ』精読 Chapter20
マーロウが、ヴェリンジャー医師の許からロジャー・ウェイドを連れ帰る第20章。 あくまで5,000ドルを要求するヴェリンジャーを罵って、帰途に着いたウェイドだったが、車中でこんな台詞をもらす。forecloseは抵当権を行使して物件の処分する、という意味。 "Maybe I'll give it to him. He's broke. The property is foreclosed. He...
View Article晴海は「輝ける都市」の夢を見るか~前川國男の晴海高層アパート~
ル・コルビュジエは、自らの理想都市「輝ける都市」の実現化をいくつかのユニテ・ダビダシオンで試みた。建物を高層化し、太陽と緑を享受するというビジョンの住宅版だ。マルセイユのユニテ・ダビタシオン(1952)が有名だ。 日本にもコルビュジエの理想都市を志した集合住宅があった。コルビュジエに師事した前川國男による日本住宅公団の晴海高層アパート(1957)である。...
View Article